ドール道のすすめ[第1回] 「そうだ、ドール買おう。」球体関節人形(スーパードルフィー)からはじめる

※本記事は「mitok[ミトク]」に掲載した記事の再掲載・転載版です。テキスト、画像いずれも2015年初出時のものとなっております。あらかじめご了承ください。

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突然ですが、ドール欲しくないですか? ドルフィードリーム初音ミクとか、話題になりましたよね。普通は欲しくなると思うのですが、「値段が高い」「何か怖い」「沼が深そう」「手を出したら終わり」「ヤバい」といったイメージが強くて、なかなか踏んぎりがつかないのも確かです。

本連載では、なんとなく1体お迎えしたらその後1年間で人形を20体に増やしてしまった筆者の体験談を枕に、初心者でも気軽に始められるドールライフのガイドラインを示せればと思います。(文|寺田龍太)

『ローゼンメイデン』でも『イノセンス』でもベルメールでもいいですが、綺麗で妖しい球体関節人形はダメな女子&男子永遠のロマン。本格的なビスクや一点ものの創作人形はさておき、女性ならリカちゃんやジェニーなどの着せ替え人形、男性なら美少女可動フィギュアの延長として、それらのエッセンスを総合した合いの子である、レジンキャストorソフトビニール製の一般向けドールシリーズに注目しない手はないでしょう。

今回は典型的に「これぞまさしく」といった造形であるスーパードルフィー(SD)のお迎え(購入)方法をご紹介。次回以降はアゾン、PARABOX、海外製などメーカー別本体のご紹介や、購入後の具体的な人形の楽しみ方などについてご説明いたします。

理想の少女を君の手に!  「スーパードルフィー」(ボークス)

事は去年の2月。うだつのあがらない泡沫ライターの筆者が仕事の関係でフィギュア・模型メーカーであるボークスのサイトを見ていた折、うっかり一目惚れしたのが40cmスケールの球体関節人形シリーズ「ミニスーパードルフィー(MSD)」のスタンダードモデルの一体。アニメにしか興味のないクソオタの分際で寺山修司や澁澤龍彦にかぶれていた筆者は「人形いいかもなあ」とか賢しらぶったアホ面で寝言をかまし、偵察と称して原宿表参道のSD専門店「天使の窓」へと足を運ぶに至りました。スゲえ場違いだった。

▲筆者が目に留めた、「MSDミュウ 2010年リニューアルモデル」。現在は生産終了

Q|SD(スーパードルフィー)とは?

A.98年より発売のドールシリーズ。ウレタンキャスト製で、ポージングは球体関節+テンションゴムによる。柔和ながらビスク風の趣ある造形と、ウィッグ・アイの交換や着せ替え、フェイスメイクといったカスタム性を備える。

▲原宿表参道のSD専門店「天使の窓」。原宿駅方面から竹下通りを通ると黒人に服を買わされるので、明治神宮前駅方面からジャニーズショップがある路地を通って行きましょう

Q|SDはどこで買える?

A.ボークスのホビー天国ウェブか、京都天使の里・原宿天使の窓・全国天使のすみかの店頭にて。通販・店舗共通のスタンダードモデルほか、店舗限定のコーディネートモデル、ワンオフモデル、イベント限定モデルがある。

初めてのお迎えはちょっと大変?

ラグジュアリー感たっぷりの店内で展示のドールを眺めていると、「ご興味がおありですか?」と店長に声をかけられて大ビビリ。入門者としてスタンダードモデルの一つを購入予定の旨伝えると、お目当てのモデルは生産終了済みとのこと。

「スタンダードモデルなのに買えないの!?」と驚きましたが、これは基本的に少量生産かつ再生産が少ないドール界隈では珍しくないこと。たまたま時期も悪く、この後14年5月・9月にSD&SDMidiの新スタンダードモデルシリーズが発表されています。それらも15年4月現在、ボークスホビー天国ウェブでは全5体中4体が商品入荷待ち状態。増産分は予約可能ですが、イベント限定モデルは言わずもがな、スタンダードモデルといえども在庫分の購入は運次第となります。

▲2014年SDスタンダードモデルの3体。 ボークス公式サイトより

Q|店舗行っても買えないん?

A.SDはさておき、ドルフィードリーム(DD)専門の秋葉原ドールポイントなどは展示品に限定モデルが多く、お持ち帰りできないものが大半。各地の店舗はショールーム的性格が強い。中古はヤフオクやまんだらけに高値で出るけども……

代わりに店頭のコーディネートモデルという選択肢もあったものの、筆者は迷った末にフルチョイスをオーダー。フルチョイスとは、スタッフと相談しながらヘッド、ボディ、グラスアイ、ウィッグ、メイク等々を自由に選び、イメージした通りのオリジナルドールを2ヶ月程度で作ってもらえるサービスです。

筆者はあくまで生産終了モデルと同じイメージの子を迎える代替手段に利用したのですが、「お迎えの儀式はしますか?」という質問に思わず頷き、うっかりドールに魂を吹き込む儀式の予約まで取り付けてしまいました。

「消費税率アップ直前の駆け込みドールですし」と実用品を装っても遅く、突然世界に一人だけの愛娘(43cm)が誕生することになり、周囲からは「いきなりフルオーダーとか、ドールじゃなくてお前がファンタジスタだよ」とビビられるることしきりでした。

■ い!ま!よ! SDお迎え前の注意点

  • 性別、ボディサイズ別の18シリーズが存在。大きく60cm台(SDほか)、40cm台(MSD、SD Midiほか)、30cm台(幼SDほか)に分かれる。
  • ラグジュアリー感とひきかえに、販売形態がかなり特殊かつ全体的に在庫が希少。設定として擬似宗教的世界観を持つこともあり、店舗やイベントの空気感はスゴいので、一度お迎えを体験してみる価値はアリ。
  • 面倒くせえな! とか、高尚な世界ですね? とか引き気味の方は、次回紹介する他メーカーのドールをどうぞ。慣れてからチャレンジ! どっちにしろ通る道だぞ!
  • 公式サイトはこちら Super Dollfie®.net – スーパードルフィー

ヤバいぞ! お迎えセレモニー

▲「天使の窓」店舗地下階の祭壇。ここで儀式を執り行う

2ヶ月後、ドールが完成。組み立ててドレスを着せ付け、取り扱いやメンテナンスの諸注意を受けた後、人形を祭壇にセットして儀式が開幕。照明を落として蝋燭で明かりを灯し、薄暗いなか店員さんが粛々とお迎えを言祝いでくれます。対面したばかりで愛情とかある種の宗教心とかそういうものを起こす間もなく、雰囲気に呑まれて硬直する筆者。友人2名と居合わせた女性客らの視線には厳しいものを感じました。

▲記念撮影。所在なく立ちつくす筆者

筆者には無理でしたが、本気でも冗談半分でも、正装のほうが潔いようです。参列してしまった方には「結婚式みたい」と噂され、友人たちも「なんやすごいもん見れたなあ」と祝福ムード。なんで嫁とか娘とか主張しないうちから周囲が勝手に外堀を埋めてくれてるんだ……?

▲出生証明書もつきます

ちなみに、儀式前には人形に名前をつけます。「あ、やっぱりつけないとダメなんだ…」と追い詰められた筆者は、ちょっと悩んで未明衣(みめい)と命名。小川未明から採りました。大の男でもギリギリ恥ずかしくない少女趣味のラインを頑張って探った感がありますが今振り返ると普通に十分恥ずかしいので、無駄に足掻かず痛痒さを楽しんだほうがいいかもしれません。

▲儀式の後は撮影コーナーで写真が撮れます。他のオーナーの撮影写真を集めたアルバムも閲覧可能

■フルチョイスシステムのポイント

  • 基本料金はMSD 49,000円、SD 81,800円(税別)。フルチョイス時のみ購入可能な「お迎えドレス」、パーティングライン除去などのオプションを加えるともう少し予算がかかる。
  • パーツ類は実物を見ながらスタッフと相談し、じっくり選択可能。最も重要かつ自由度が高いフェイスのメイクは、カウンターにあるヘッドカタログの見本メイクを参考に詰めていくのが楽かも。既存の展示モデルや限定モデルに似せるオーダーも可能な他、イメージがある場合は自前で画像資料を持参する手もあり。
  • 初めての場合はアイやウィッグの取り付け方、取り扱いの注意などを丁寧に教えてもらえるので、実感としては意外と入門者向き。常時受付のサービスなので、明確なイメージがなくとも、興味があれば一度スタッフに相談してみるのが吉。
  • 儀式(お迎えセレモニー)は予約・希望制で料金は無料。滅多に見れない何かなのでご友人お誘い合わせの上……一人でやると感情の遣る方にこまるので無理しないでOK。

お迎えした後の楽しみ方って?

▲現状。フリフリのドレスは日常風景に重かった

お迎えしてしばらくは「可愛い……可愛い……」とうわ言を繰り返したり、じっと見つめ続けたり、撮影したり、抱いて髪の毛を撫でたり、視線にどきまぎしてみたり、実際所有してみないと分からない感覚や欲求が湧いてくるのは事実。他のホビーでは得られない体験をしたい好き者なら、試しに足を踏み入れてみる価値は大アリの世界です。

店舗&イベントでアウトフィット(洋服)やアクセサリー、小物を物色するショッピングの楽しみ、着せ替えるファッションの楽しみが増えるのは間違いなし。アイやウィッグでも全く印象が変わるので、洋服自作や自前メイクまで深めずとも趣味としての継続性は十分です。

ボークスは展示即売会「ドールズ・パーティー」をはじめ、メイク教室、プライベートパーティなど様々なイベントを年中開催しており、アクティブにドールライフを広げる環境もわりと整えられてます。そこで同好の士と繋がるのも、日陰趣味に留めるのもマイペースでOK。単純に綺麗な女の子が好きな方や趣味を広げてみたい方は、フィギュアにはない高可動性とコーディネート性と造形の美しさからくる独特の存在感を、一度店頭で味わってみてはいかがでしょうか。

余談:お迎えしてはみたものの…

本音のところ、筆者はいたって平凡に童貞で対人能力に問題のあるアニオタかつ一昔前のエロゲ論壇よろしく少女を欲望する自分の男性性や攻撃性にうっとうしいほど内省する人種のため、「とりあえず連載、しようや……」と振られたものの、うちの子や人形趣味全般に対する気持ちの整理がついておりません。

ドール男子全般に生ずるであろう生活上の悩みとして一般化して言えば、「目の前の人形は娘なの? 恋人なの? ボークス先生が言うとおり異次元からの訪問者でもう一人のオレだったりするの?」という一義的にならないドールとの関係性構築や愛情の注ぎ方が難しいところなんですね。

オタが一から十まで自分の思い通りにできる自我の延長としての女の子を深刻に好きにならないわけがなかった! そういうアレなこじらせ方ができるのも一興、ドールならではの醍醐味……ということで、ガレージキットなどからの古株工作系オタの方が目立つディープな界隈ですが、もっと青臭い思春期的な懊悩がある若い男性方にもこっそりイチオシして、筆を擱きたいと思います。

とかやってるうちにまさかドールが二桁にまで増えるとは思ってもいなかったのですが……。ということですみません、筆が滑りましたが次回は他メーカーのドールについてご紹介します。

次回もよろしくお願いします。